皆様はスーツを着るときに、正しくコーディネートできていますか?残念ながら、だらしない着こなしの方もよく見かけます。スーツは男の戦闘服です。正しくカッコよく着こなすために、押さえておくべき基本のキをまとめてみました。
正しいスーツの選び方
サイズ感の重要性
スーツをカッコよく着こなすためには、デザインや色よりも「サイズ感」が最も重要です。どんなに高価なスーツでも、サイズが合っていないと台無しになります。逆に、手頃な価格のスーツでもサイズがピッタリ合っていれば、スタイリッシュで洗練された印象を与えることができます。ここでは、スーツの主要なポイントごとに適切なサイズ感の基準を解説します。
ジャケットのサイズ感

- 肩幅
- ジャケットの肩幅は、スーツのサイズ選びで最も重要なポイントです。肩の縫い目が肩先にしっかり合っていることが理想です。縫い目が内側に入り込んでいると窮屈に見え、外側にずれているとだらしなく見えます。
- 袖丈
- ジャケットの袖丈は、シャツの袖が1~1.5cm程度見える長さが適切です。ジャケットを汚れから守るために、少しシャツを長くします。試着時には腕を軽く動かして、適切なバランスを確認しましょう。
- 胴回り
- ボタンを留めた際、胸や胴回りに余分なシワができないようにするのがポイントです。Xジワができるときは、胴回りが狭すぎるときです。ボタンを留めた状態で拳が入るくらいが目安と言われていますが、個人的にはもう少し狭い、手の平が入るくらいがスタイリッシュで良いバランスに感じます。
- 着丈
- お尻が隠れるくらいにするのがポイントです。短すぎるとカジュアル感が出てしまうので、ビジネススーツでは避けるべきです。
トラウザーズのサイズ感

- ウエスト
- パンツのウエストはベルトなしでもズレ落ちない程度に合わせましょう。ベルトは補助的な役割で使い、サイズ調整のために使わないことがポイントです。
- 丈の長さ
- パンツの裾の長さは、ハーフブレイクがオススメです。ノーブレイクが好まれる傾向もありますが、座ったときに足が大きく露出するため美しくありません。立ったときと座ったときの両方を考慮して決めましょう。
- フルブレイク(ワンクッション):裾がしっかり靴に乗り、はっきりとシワができる長さ
- ハーフブレイク:靴に軽く当たって、少しだけシワができる長さ
- ノーブレイク:裾が靴に当たらない長さ
- パンツの裾の長さは、ハーフブレイクがオススメです。ノーブレイクが好まれる傾向もありますが、座ったときに足が大きく露出するため美しくありません。立ったときと座ったときの両方を考慮して決めましょう。
- 裾幅
- 裾幅にはトレンド感が出ます。広すぎるとクラシカルになり、狭すぎると一昔前のトレンドであるスリムフィットの印象になります。18cm〜20cmあたりが普遍的に美しいと感じやすいでしょう。個人的には19cmがオススメです。
色の選び方


ビジネスシーンにおいては、ネイビーかグレーを選んでおけば間違いありません。基本的にはダークトーンになればなるほどドレス度が増すため、ダークネイビーやチャコールグレーがオススメです。ですがダークトーンと言っても、ブラックは避けましょう。日本ではビジネスシーンでもブラックを着用されている方がいらっしゃいますが、本来は冠婚葬祭用のフォーマルで用いられる色のため、ビジネスシーンでブラックは避けるべきです。

ブラウンやカーキなどのアースカラーは、最近はビジネスでも許容される傾向にあります。ですがこれらのカラーは英国ではもともとカントリー用のカラーで、シティ用(ビジネス用)ではネイビーかグレーと決まっています。オシャレ感を出すためにアースカラーを選択するのも良いですが、これはすでにネイビーやグレーのスーツを持っている人に限っての話です。最初の一着で選んでしまうと、かしこまった場面で浮いてしまうので注意してください。
柄の選び方
柄によってもドレス度、カジュアル度が変化します。個人的には無地が最強で、無地に始まり無地に終わると思っています。初心者が選んで間違いがないことはもちろん、スーツを着なれた上級者の方にこそ、こだわりの無地スーツを作っていただきたいです。他にはストライプやグレンチェック、ヘリンボーンなど、様々な柄があります。それぞれ人に与える印象も変わりますので、どんな印象を持たれたいかを考えて柄を決めてください。


無地:シンプルでフォーマル寄り。信頼感を与える。どんな場面でも適応しやすい。


グレンチェック:基本カジュアルなチェック柄において、最もドレス度が高い柄。


ストライプ:シャープでスタイリッシュな柄。ストライプ幅が大きいと威厳が出る。


ウィンドウペーン:カジュアルな印象のチェック柄。基本的にはカントリー向け。


ヘリンボーン:魚の骨のような模様で、上品でクラシックな雰囲気。
コーディネート
シャツ


シャツは白かサックスブルーのドレスシャツを選びましょう。英国を発祥としたフォーマルな着こなしがグローバルスタンダードとなり、ビジネスシーンで最適な色は白とサックスブルーとなりました。どちらの色も、ネイビースーツやグレースーツとの相性が良く、間違いのないコーディネートができます。
シャツの襟はさまざまな形状、開き幅がありますが、オススメはワイドカラーまたはセミワイドカラーです(写真はワイドカラー)。それ以上に開いたカッタウェイカラーなどは、ネクタイの結び目の収まりが悪く、オススメできません。また、ボタンダウンシャツはノーネクタイで着たときに形状が美しく保てますが、ビジネススーツではネクタイを締めますのでボタンダウンは避けましょう。(米国スタイルではボタンダウンにネクタイを締めることもあります。)
その他にも袖口の形状や、ボタンの色、刺繍の色、胸ポケットの有無など、さまざまな仕様がありますが、ビジネススーツのシャツとしては、よりシンプルでオーソドックスなものを選ぶようにしましょう。シャツで遊びを入れることは、残念な着こなしに繋がりますのでオススメしません。
ネクタイ
ビジネスシーンにおいては、ネイビー無地が最強です。素材はシルク素材など光沢のあるものを選びましょう。ネイビー無地のスーツにネイビー無地のネクタイ、シンプルな組み合わせだからこそ、それぞれのアイテムに質が高いものを選ぶと、とても上品なスタイルとなります。
色の選び方






ネクタイの色は人に与える心理イメージを変えるので、どんな印象を与えたいのかで決めると良いです。
- ネイビー:信頼、誠実、落ち着き。ビジネスシーン全般や面接などに最適。
- ブルー:爽やかさ、知性、冷静。会議や交渉の際に効果的。
- ボルドー:品格、自信、情熱。リーダーシップを発揮したい場面に最適。
- ブラウン:温かみ、親近感、成熟。クライアントとの親しみを深めたい場面などに。
- ベージュ:柔らかさ、控えめ、洗練。軽やかな雰囲気を出したい場面などに。
- グレー:クール、落ち着き、洗練。シンプルで主張を抑えたい場面などに。
柄の選び方


ネクタイの柄もまた、印象を大きく左右します。ブランドが分かる目立つロゴの柄などは避けましょう。また、レジメンタルストライプは本来、軍隊や学校などの所属を表すために用いられた柄です。ビジネスにおいては適さない場面もありますので、使用には注意が必要です。ビジネスシーンで無難に使うためには、無地、小紋、ペイズリーあたりがオススメです。
- 無地:シンプルでフォーマル。公式な場や、上品さを求められるシーンに。
- ドット:最もエレガントな柄とされ、華やかさの求められるパーティーシーンに。
- レジメンタルストライプ:元々軍隊や学校などの所属を表すために用いられた柄。
- チェック:カジュアルで親近感のある柄。かしこまった場面には適さない。
- 小紋:上品で洗練されたイメージの柄。柄が小さいほど上品とされる。
- ペイズリー:エレガントで華やかな柄。ビジネスやパーティーシーンに。
結び方や大剣幅の選び方


ネクタイには色々な結び方がありますが、プレーンノットとセミウィンザーノットのみ覚えていればOKです。プレーンノットは結び目が左右非対称になるのが特徴で、セミウィンザーノットは左右対称になります。ネクタイの幅によっては、セミウィンザーノットだと結び目が大きくなりすぎて野暮ったい印象になってしまいます。ネクタイの幅に合わせて、適した方の結び方をするのがオススメです。また、アパレル系ではプレーンノットが好まれる傾向があります。
ネクタイの大剣幅は、基本的にはジャケットのラペル幅と合わせることが良いとされています。ジャケットのラペル幅はトレンドによって狭くなったり広くなったりしますが、8cm程度が標準的です。最近は12cmなど、極端に広いラペル幅のジャケットも見られますが、ネクタイ幅は大きいもので9.5cm程度です。厳密に合わせることは難しいですが、広めのラペルのときはナロータイ(幅6cm程度)を避けるなど、極端に幅に差がつかないように気をつけましょう。
靴の種類と選び方



ビジネススーツに合わせる革靴は、紐靴が基本です。ローファーなどの紐の無い靴は合わせないようにしましょう。唯一の例外として、ダブルモンクストラップはスーツに合わせることが可能とされていますが、こちらもかしこまった場面では避けるべきです。また紐靴であっても、外羽根タイプの物はカジュアルとされています。基本のキとしては、黒の表革内羽根ストレートチップ、と覚えておきましょう。
時計・ベルト・バッグ


時計はシンプルなドレスウォッチを選びましょう。金属ベルトではなく、革ベルトを使ったものを選ぶのが基本です。クロノメーター付きなどの多機能な物は避け、できるだけシンプルな物を選びましょう。秒針すら無いものが、最もドレッシーだとされています。ケースはなるべく薄く、小さいものがスマートです。ケース形状は、シャツの袖口と綺麗に繋がる角形ケースが個人的にはオススメです。

ベルトも、バックルなどの装飾が無い、シンプルな革ベルトを選びましょう。革でできていても、スウェードやメッシュベルトは避けるべきです。着こなしのポイントとしては、ベルト調整の穴は真ん中を使うことです。穴が3つなら2つ目の穴、穴が5つなら3つ目の穴といった具合に、中央の穴で使えるようにベルト長さを調整しましょう。

バッグも革バッグがベストです。ナイロン製やファブリック製などのカジュアルな素材は避けましょう。また、リュックはもちろんですが、ショルダーバッグも避けるべきです。肩に下げると、スーツの型崩れに繋がります。手持ちタイプのブリーフケースやダレスバッグなどがベストな選択になります。

よりスーツをかっこよく着こなすためには、時計の革ベルト、腰ベルト、バッグなどの革製品の色を、革靴の色と合わせることがポイントです。全ての革製品の色を合わせるのは難しく感じるかもしれませんが、洗練された印象になるので是非トライしてみてください。黒の革靴が基本のキですので、まずは黒のベルトやバッグから揃えることをオススメします。
よくあるNG例
- ジャケットの一番下のボタンを留めている:一番下は留めません(アンボタンマナー)
- シャツの第一ボタンが開いている:サイズを合わせ、全ボタンを閉めましょう。
- ネクタイにディンプルが無い:結び目付近に窪みができるように締めましょう。
- 座ったときに素足が見える:ロングホーズを履いて素肌が見えないようにしましょう。
- ポケットが膨らんでいる:スーツのポケットには物を入れすぎないようにしましょう。
- ジャケット腰ポケットのフラップ:屋外では蓋をして、屋内では蓋をしまいましょう。
- スリーピーススーツでベルトのバックルが見える:スリーピースはウエストコートとトラウザーズが繋がるような一体感が美しいので、ベルトが見えるのはNG。ベルトレスにして、サスペンダーを使うと良いです。トラウザーズ自体をベルトループなしのサイドアジャスター仕様にすると完璧です。
まとめ
ビジネススーツにはフォーマルほどのガチガチのルールはありませんが、だからこそ何も考えないで着てしまうとカッコよく着こなすことが困難です。ここで紹介した基本のキを押さえて、洗練されたスタイリングを実現させていただけると幸いです。